JA白山 有機栽培の取組み
JA白山では、未来を担う子供たちに美味しくより安全安心な農産物を食べてもらいたいという思いから有機栽培に取組んでいます。
■有機栽培ってなに?
有機栽培の定義は結構難しいのですが、簡単に表現すると「化学肥料や農薬を使用せず農作物を育てること」になります。
あまり知られていませんが、農業用の化学肥料の原料もほとんどは海外からの輸入に頼っており、肥料3要素である窒素・りん酸・加里の原料は化石燃料(原油・天然ガス)と鉱物資源(りん鉱石・加里鉱石等)で、大型タンカーなどで海を渡って日本に届きます。
一方、有機肥料は牛糞・鶏糞・油粕・魚紛・米ぬか・稲わらなど、主に国内の動物や植物由来の有機物原料が使用され、土壌で微生物に分解されることではじめて肥料成分に変わります。
分解の工程が必要な有機肥料に比べ、肥料成分そのものを使う化学肥料の方が安定した効果を得られるだけでなく安価なため慣行栽培(普通の栽培)では化学肥料を使用するのが一般的です。
私たちは日常生活でもハエ・蚊を退治するためには殺虫剤を使用しますし、風邪や病気にかかれば薬を服用しますが、自然の中で栽培されている農作物にも当然虫はつきますし病気にも掛かります。
農薬の役割は害虫を駆除し、病気を予防・治療することですから、本来農作物の栽培には不可欠なものです。殺虫剤も風邪薬も鎮痛剤も使用できない生活を考えてみれば農作物における農薬の重要性が分かると思います。
最初に有機栽培の簡単な定義を「化学肥料や農薬を使用せず農作物を育てること」としましたが、有機栽培では収穫量も品質も安定せず、除草作業などの手作業も増え、資材コストも増加するうえに病害虫の発生で減収するリスクも抱えることになります。
スーパーなどに並ぶ有機農作物が一般農作物に比べ高値で販売されているのはこの様な理由からです。
■有機栽培と環境負荷
有機栽培は環境にやさしいという話をよく耳にしますが正解とも言えますし間違いとも言えます。
たとえ有機栽培でも温室栽培で化石燃料を使って加温栽培された農作物では露地栽培に比べて温室効果ガスの排出量は増加しますし、極端に言えば県外や国外で生産された有機農作物は化石燃料を使って輸送されてくる訳ですから地元産の農作物に比べ環境にやさしいとも言えません。
ただ、先にお話ししたように化学肥料の原料のほとんどは海外から化石燃料を使って輸送されますし、除草剤などの農薬は分解の工程で一定の環境負荷が掛かるのも事実です。
重要な点は、消費者が「有機栽培だから環境に良い」といった先入観を持たず、地元産の農産物や旬の農作物を上手に利用することで初めて環境負荷を下げることが出来ます。
■有機栽培と農業政策
SDGsや環境を重視する国内外の動きが加速していくなかで、農林水産業においてもこれらに対応し、持続可能な食料システムを構築することが急務となっています。
農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を策定しました。
農林水産省が推進する「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに国内の耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合を25%へ拡大する目標を掲げています。
■JA白山が有機栽培に取組む理由
JA白山が有機栽培に取組む理由のひとつは農業政策だからです。
6年産のお米は価格が上昇し一時的に生産者の収入も増加しましたが、肥料をはじめとする生産資材や農業用機械、燃料費や人件費などの生産コストが上昇を続けるなかで農業全体では非常に厳しい経営環境が続いています。
農業政策である有機栽培に取組むことで国からの支援も得やすくなりますし、有機栽培による差別化によって有利販売にも繋げる事が可能です。
有機栽培にはまだまだ課題も多いですが、より低コストに収穫量・品質の安定を図ることが出来れば、これからの農業を支える有効な手段となります。
そして、有機栽培に取組む最大の理由は食の安全安心です。
決して慣行栽培が安全安心ではないと言っているのではありません。
現在、一般に流通している農産物の殆どは慣行栽培で農薬等の使用基準を厳守した安全性の高いものです。
しかし、近年では洗剤、柔軟剤、芳香剤などの日常生活で使用しているごく微量の化学物質に対しアレルギー反応を起こす化学物質過敏症の子どもが増加しています。
JA白山では、未来を担う子ども達により安全で安心な農産物を食べてもらいたいという思いから有機栽培に取組むことを営農方針に加えました。
有機栽培が簡単なものでは無いことは既にお話した通りですが、令和6年度からJA子会社(有)アグリサポート白山で化学肥料・農薬を使用しない特別栽培米「ひゃくまん穀」に挑戦し、令和7年度からは有機野菜にも挑戦しています。
また、得られた実証試験結果をもとに栽培マニュアルの策定に取組み、管内生産者へ有機栽培の普及推進を図り仲間づくりと産地化を目指します
■白山市のオーガニックビレッジ宣言
オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費まで一貫し、農業者のみならず事業者や地域内外の住民を巻き込んだ地域ぐるみの取組を進める市町村のことを言います。
全国では129の市町村、石川県では珠洲市・羽咋市が既に取組んでいますが、白山市では令和7年度を目標にオーガニックビレッジ宣言を目指しています。
その一環として白山市内の学校給食への有機農産物の活用を検討しており、JA白山も白山市との協力関係を築きながら安定した有機農産物の供給を目指します。